INTERVIEW 2019.5.24

会社のコアサービスをけん引するのは、学生時代を音楽に捧げた未経験エンジニア

新卒でWanoに入社し、2019年で入社5年目を迎えた渡邊陽平。未経験からエンジニアのキャリアを歩み始めた彼は、TuneCore Japanのリニューアルをリードするなど、今や社内で中核を担う存在になりました。学生時代はWebとは異なる分野にいた彼が、成長を遂げるまでの軌跡です。  

作曲、バンド活動、音響設計……。好奇心が源泉になった音楽漬けの学生時代

渡邊は現在、音楽シーンで活躍するアーティスト向けに提供するデジタル音楽流通サービス「TuneCore Japan」のバックエンド開発を行う26歳。

近年は学生時代からサービス開発を行う人も一定数いる中、渡邊がプログラミングに本格的に触れたのはWano入社後のこと。その背景には、幼少期から続けている音楽と、「物事の裏側を見たくなるタイプ」と本人が話す、渡邊ならではのものの見方がありました。

渡邊「学生時代までは音楽一筋でした。最初の出会いは、小さいころ家にあった電子ピアノです。1年だけピアノも習いましたが、それほど熱心に練習していたわけではありませんでしたね。ただ、小学生のころに漫画を描いていて、ふとその漫画のテーマソングをつくろうと思ったんです。そのときにピアノで作曲をしたのが、自分の中では大きな体験のひとつでした。

中学ではバンドでギターをやっていました。どうしても文化祭でライブがやりたくて(笑)。高校では音楽の幅を広げたくて、軽音楽部じゃなく吹奏楽部に入りました。

大人数できれいなハーモニーをうまく響かせるための技術や方法論を知りたかったので、それを学ぶには吹奏楽が合っていると思いました。

音楽にのめり込むと、コード進行など曲の分析をする人はけっこういると思います。ぼくの場合はなぜかそれだけじゃなくて、中学高校のころから、ライブ会場でPA(音響設備)の人が何をやっているかまで気になるようになって。興味を持ったものに対しては、分解して仕組みや作用を知りたくなるんです。今から考えると、エンジニアリングにも通じる部分かもしれません」

自身の好奇心についてそう話す渡邊は、大学ではその興味から音響設計を研究しました。しかし、最終的にはWeb業界での就職を選択します。

渡邊「音響設計は、波の跳ね返りなどを扱う、主に物理学の分野です。その先には、コンサートホールの設計やスピーカーの開発など、専門性を生かした道もあるのですが、ぼくの中では完成までに時間がかかりすぎるような気がしたんです。

その意味で、Webはより短い時間の開発でサービスを世に出して、フィードバックが得られる世界です。じつは、中学のころにバンドのホームページや、MIDIでオリジナルの着メロをつくっていたので、インターネットの世界も好きで(笑)」

開発会社の内定から一転、Wanoでキャリアをスタート

音楽漬けの学生時代からWeb業界を志した渡邊ですが、就職活動を始めたころは音楽にかかわることを必須条件にはしていませんでした。Wanoと出会ったのは、いくつかのシステム開発会社の選考を受け、ある会社に内定した後のことです。

渡邊「今も音楽活動を続けているので、TuneCore Japanのユーザーでもあるのですが、実は会社に応募するまではサービスのことを知りませんでした。

就職先は音楽とかかわる会社じゃなくて良いと思っていたのですが、いざ内定すると『本当に音楽に関係ない仕事でいいのかな』と心配になって……。そこでもう一度会社探しをしていたときに、就活サイトでWanoを見つけたんです。TuneCore Japanという音楽に関わるサービスのほか、グループ全体でも映像や動画広告などエンタメに絡んだ事業をしていて、エンジニア未経験でOKだったことと、説明会で社員を見たときに働いてて楽しそうだなと思ったのが決め手でした」

その出会いからすぐ応募をした渡邊。順調に選考に進み、無事新卒での入社が決定します。最初に担当したプロジェクトは、女性向けファッションスナップの自社サービス「itSnap」の立ち上げでした。「コードがほぼ書けなかった状態」で管理画面の開発を任され、大きなチャレンジだったと振り返ります。

渡邊「開発は役員である上司を含めて全部で3人。もちろん上司が作業についてのマネジメントをしてくれたんですが、上司は全体も見なくてはならないので、管理画面の開発のメイン担当はぼくしかいなかったんです。いきなり現場に飛び込んだ感じで、会社でも家でもずっと本を読んで勉強していました。ただ、『管理画面は触るのは身内だけだし、何かあれば社内で解決できるから大丈夫』と背中を押してもらえましたね。

とはいえ、開発しながら仕様を詰めていくスタイルは、慣れるまで苦労しました。コーディングだけじゃなく、設計も『うまくやっておいて』と言われても、最初は基準が自分の中にないので何が正解かわからなくて。

でも自社サービスだったこともあって、やり直しや納期が受託開発より柔軟で、いろいろ自分で考えて試行錯誤しながら取り組めたのが良い経験になりました」

念願だった音楽にかかわるサービスに参画。チームの中核メンバーに

こうした文字通りのOJTを経て、渡邊は入社時から希望していたTuneCore Japanの開発チームに配属されます。ここでも、“自分で考えて試行錯誤する”スタイルで力を発揮しました。

渡邊「異動してから1年くらいして、サイトのデザインリニューアルをしたんですが、開発をぼくだけでやったんです。社外のデザイナーさんと組んで、全部で50ページくらいのデザインを変えるプロジェクトで。時間はかけられたものの、もう1〜2人いてもいいんじゃないかと思いました(笑)。

量の多さもですが、ここでも単なる実装というよりも仕様や設計の重要性について考えさせられました。サービス立ち上げ当初は複数のエンジニアがスピード重視でつくっていたのもあって、元のソースコードを理解するのが最初の壁でした。

ただ、エンジニアの数も増えてきていて、そのままのソースコードだと効率や運用の面で良くないと思ったので、デザインだけじゃなく実装ルールも見直すことにしたんです。

大きな組織だと、そういうことを簡単に変えづらいのかもしれませんが、TuneCore Japanでは声を上げれば基本的に考えを受け入れてもらえます。ぼくも気になったら解決せずにはいられないタイプですし、提案してみるとじつはみんなも『同じこと思っていたけど手をつけられなかった』と(笑)」

冗談交じりに話す渡邊ですが、こうした全体を考えて仕事をする姿の根底には、音楽で培ったものがあると話します。

渡邊「バンドをやっているときからそうなんですけど、自分ひとりが気持ちよく弾くよりも、みんなで気持ちよく演奏するにはどうしたらいいかを考えるんです。仕事でも、そういう仕組みづくりが好きですね」

そしてもうひとつ、風通しの良さをあらわすエピソードとして、渡邊は米・テキサス州で開かれる音楽、映画、インタラクティブを組み合わせた大規模イベント「サウス・バイ・サウスウエスト」(以下、SXSW)に参加した際の話を挙げます。

渡邊「TuneCore Japanは、SXSWで日本人アーティストがパフォーマンスをするステージのスポンサーをしています。なので毎年、営業チームの何人かが視察に行くんです。

2018年の忘年会で、エンジニアの役員が『エンジニアだって見に行ったほうがいいよ。行く?』と言ってくれました。その場のノリでじゃあ行きますと言ったら、本当に覚えていてくれて。宴席での思いつきって、だいたい流れちゃうと思うんですが、後日会社で意思確認されて、すんなり決まりました(笑)」

参加前は「SXSWに行ってもコードが書けるようになるわけじゃない」と、仕事として自身が参加する意義が見いだせなかった渡邊。しかし、本国のTuneCoreのメンバーとの交流や、出展するスタートアップ企業からのインスピレーション、そして何より世界で活躍するアーティストを目の当たりにし、新しい刺激を持ち帰りました。

個人ではなく、“チーム”として。渡邊が見据えるこれから

Wano、そしてTuneCore Japanでのさまざまな経験を通じて、エンジニアとして着実に成長している渡邊。2019年の今は、プレイヤーとしてはもちろん、社内の中堅メンバーとして、マネジメントにかかわる仕事にも取り組んでいます。

渡邊「最近は自分で開発をするだけでなく、ほかのメンバーの進捗管理などもやっています。でも実は、指示があってそうしているわけではないんです。

以前から各々のタスクを週次で共有していたのですが、そのフローが少し運用しづらかったので、最初はそれを改善したのがきっかけで。運用フローを変え、タスク管理ツールを変えたりしているうちに今のようになりました。

また、コードレビューの文化もきちんとは確立していなかったので、仕組みとしてできるように整えたりもしました。環境づくりには興味がある分、気づくことも多いのかもしれません」

プレイヤーとしてだけでなく、主体的にマネジャーに近い役割も担う渡邊には、今後のTuneCore Japanやチームがどのように見えているのでしょうか。

渡邊「サービスとしては、よりユーザー視点で使いやすさを究めていきたいです。たとえば今も、より音楽ビジネスの実態に合わせるための新機能を開発中で、近いうちにリリース予定です。

また、今後はスマホで録音してそのまま音源をアップするなんてこともさらに広まるんじゃないかと思います。そういったニーズにも対応していかないと、ユーザーに寄り添えないなと感じています。

そして、会社としては開発効率をもっと上げられるようにしたいと思っています。具体的には、今はサービスがPerlで書かれているのですが、メモリ管理やエンジニア確保の課題解決のためにGo言語に書き換えるプロジェクトなどが走っています。

やることは正直いっぱいあります。でもその反面、楽しいです。自社プロジェクトなので、自分が提案したことに挑戦しやすくて、ありがたい環境だなと思っています」

自分ひとりだけでなく、ユーザーやメンバーみんなが心地よくなるにために力を尽くしていきたいーーその想いを胸に、渡邊はこれからも歩みを進めていきます。