新サービス「ANTENNA! powered by DAM」開始―“業界初”の試みの裏にあった知られざる苦労とは
アーティスト自身の音源ファイルや動画ファイル、歌詞さえあれば、誰でもカラオケ配信できる「Video Kicks ビデオ配信サービス カラオケ配信」。昨年9月にスタート以降、着実にユーザーを増やしつつありますが、この7月からは「ANTENNA! powered by DAM」が選択できるようになり、業界最大手の業務用通信カラオケ「DAM」で自身の楽曲が配信されるチャンスが得られるようになりました。この試みは、“業界でも初めて”とも言える、挑戦的な取り組みでもあります。アーティストにとっても待望のサービスとなる「ANTENNA!」の意義や、その取り組みの経緯、さらに今後の展望について、開発に携わった3人に聞きました。
田中:Video Kicksのセールス・フロントマンとして、クライアント/ユーザーコミュニケーションを担当
前田:プロジェクトを牽引するVideo Kicksのプロダクトマネジャー(PdM)。
伏見:Video Kicksのエンジニアチームのリード。Video Kicksには構想から関わっている。
業界最大手の「DAM」で自分の曲が配信される可能性がある、またとないチャンス
今年の7月から開始した「ANTENNA! powered by DAM」(以下、「ANTENNA!」)は、Video Kicksの「カラオケ配信」から「ANTENNA!」を選択すると、その中から、毎月厳選された20~30曲が、カラオケ楽曲として「DAM」に配信されるサービスです。これまで、「DAM」で楽曲を配信する機会がほぼなかったメジャーレーベルや事務所に属していないインディペンデント系のアーティストにとって、このようなサービスが出来たことは大きなメリットと言えます。
「これまでVideo Kicksのカラオケ配信先はJOYSOUNDのみでしたが、今回、業界最大手のDAMでのカラオケ配信にチャレンジできるようになりました。まだ枠は限られているものの、Video Kicksに登録さえすれば、DAMで自分の楽曲が配信されるチャンスがあることが、最大のポイントです。
実は今まで、アーティストがDAMに自分からカラオケを載せるように働きかける方法はほとんどありませんでした。それが、今回初めて、Video Kicksを通じてDAMにチャレンジできるようになりました。これは、業界でも初の取り組みですし、JOYSOUND、DAM両方にも載せられるのはディストリビューターはVideo Kicksだけなんです。」 
インディペンデント系のアーティストを多くサポートしてきたTuneCore Japanだからこその取り組み
このような業界初の試みとなるANTENNA!が始まった背景には、DAM側の“ネクストブレイクアーティストの発掘をしたい”、“インディペンデントアーティストも積極的に取り込んでいきたい”、という思いがありました。
「音楽配信サービスやSNSの影響で、メジャー一辺倒ではなくインディーズの楽曲を聴く人たちが増えてきました。それに伴い、カラオケ業界にも、 “これから何が流行るのか”、“どんな曲が歌われるのか”を幅広くキャッチアップしていかなければいけない、といったニーズが生まれていたのだと思います。カラオケに行くお客さん側も、今流行っているこの曲がないと楽しくないし、将来的にカラオケに来る人も減っていくことにつながるとも考えられますよね。どのアーティストがいつ跳ねるのかわからない時代に、我々TuneCore JapanやVideo Kicksならそれをピックできると評価いただいたことが、今回の取り組みにつながったのかなと思っています。」
一方で、“ネクストブレイク候補にアプローチしていきたい”、という先方のニーズに応えるため、開発にあたっては様々な苦労もあったそうです。
「作るもの自体は分かりやすかったんですが、DAMさんが必要としている情報をきちんとまとめて出す、というところはかなり話し合いを重ねましたね。先方から、これまでアプローチできていなかったけれど“これから来る”アーティストにアプローチしたい、という要望があったので、じゃあ“これから来る”ってどういうことか、これまではDAMに入ってなかったけど、入れたら歌われるような曲ってどういうものなのか、といったことをきちんとデータ化してまとめていくのは大変でしたね。」
アーティスト・カラオケ業界だけでなく、ファンにとっても意味のあるサービス
これまで自分の曲が配信される場が限られてきたインディペンデント系のアーティストにとって、自身の楽曲をアピールできる可能性がある絶好のチャンスとなるANTENNA!ですが、それ以外にも大きな意味を持つ取り組みでもあります。
「ANTENNA!は基本的に原盤配信なんですが、実はこれまで限られたアーティストしか原盤で流すことができなかったので、すごく貴重な機会なんです。
原盤配信はアーティストにとってメリットが大きいだけでなく、自分の好きなアーティストの曲が原盤で流れるファンにとってもすごく魅力的だし、ひいてはそれがカラオケ店を選ぶ動機にもなってくるんじゃないかと思います。」
Video Kicksカラオケ配信自体にも、インディペンデント系のアーティストとカラオケ業界をつなぐ、という役割があると言います。
「以前、カラオケ業界としては大手レーベルとだけ付き合っていれば良かったですけれど、今は窓口も多くなってきていて、バズったアーティストの連絡先も分からない、みたいなことがあるんです。インディペンデント系のアーティストは事務所やレーベルに属していない人も多いし、そもそもDAMから連絡が来たところで、どうしたら良いのか困る部分もあるので、そういうのを省いてカラオケ配信ができるのは、アーティストにとってもカラオケ業界にとってもメリットになるのかなと思います。」
見えてきた「カラオケ配信」の課題と今後の展望
ANTENNA!の開始はVideo Kicksにとって大きな一歩ですが、今後もっと配信枠を増やしていきたいという思いもあります。
「実は、今カラオケ配信されている曲の中でも、結構な回数歌われている曲があるんですよ。再生回数が同じ1000回でも、“ストリーミングの1000回”と”カラオケの1000回”は意味が全然違う。カラオケは1000人がカラオケ店に行って歌っていることになるけど、これってすごいことだなと思うんです。
カラオケ業界からすると、そのアーティストの曲がラインアップにあることで、カラオケに来る人が増える、ということでもあります。どんなマイナーな曲で、再生される回数がたとえ少なかったとしても、その曲がラインアップされることで、来店者数の底上げにつながると思うので、もっと配信曲数を増やしていきたいですね。」
今回のリリースを契機に競合からVideo Kicksに移るアーティストも少なからずいた一方で、まだまだカラオケ配信を活用しているアーティストが少ないのも課題です。
「カラオケ配信機能がリリースされて1年になるのですが、TuneCore Japanの楽曲でカラオケ配信をしている曲はまだまだ少ないですね。サービスの認知が低いのか、手間がかかると思われているのかなど要因は分析中ですが、もしハードルが高いと思われているんだったら、そんなことはないというアピールが必要です。先日、”自分の曲を歌いにカラオケに一人で行った、夢が叶って感激した”というようなメールをいただいたんですが、そういう体験をたくさんのアーティストに届けたいなと改めて思いました。
SNSでは“カラオケを歌ってミュージシャンを応援したい!”というファンの人も結構いますし、“カラオケ印税”という現実的なメリットもあるので、カラオケ配信の魅力をちゃんと伝えていきたいと思っています。」
カラオケ印税(著作権使用料)とは?いくらもらえる?