INTERVIEW 2025.10.15

【前編】TuneCore Japan創業メンバーの吉野と振り返る、TuneCore Japanの始まりと成長。 そしてこれから描いている未来とは?

Wanoグループの音楽デジタルディストリビューションサービスTuneCore Japanは、誰でも自分の楽曲をApple Music, Spotify, TikTok, Istagramなど55以上の音楽ストリーミングサービスやSNSへ配信し、収益化ができるサービスです。

2012年にサービスを開始したTuneCore Japanは、アーティストへの収益還元が100% というところが大きな特徴の一つで、2024年のアーティストへの還元額は164億円と過去最高額を更新し、累計では711億円に到達しました。

また、配信曲の累計は100万曲を超え、2024年はTuneCore Japanから配信した楽曲がバズを起こし第75回NHK紅白歌合戦に出場したアーティストを輩出するなど、年々右肩上がりで成長を続けています。

前編・後編に渡ってお届けする本記事は、前編では“TuneCore Japan”のサービス立ち上げを改めて振り返りながら、サービスの成長につながったターニングポイントまでを、後編ではTuneCore Japanを支えるメンバーの話、これから見据えるサービスの展望についてをTuneCore Japan創業メンバーであり、取締役である吉野に語ってもらいました。

Wano代表取締役の野田威一郎が米・TuneCoreを口説いて始まった
TuneCore Japan

「TuneCore Japanを立ち上げたWanoの代表である野田とは、大学時代からの付き合いになります。大学入試で出会った野田とは大学内にとどまらず何かあればつるんでいて、一緒にイベントを開いたり、パートナーのような存在でしたね。あの時から、何か新しいことを自分たちでやっちゃおうぜ!みたいな感覚があって、そのまま今でもその感覚が続いているような感じがしますね。」

「もともと僕はアーティストとして活動していたんですけど、当時の日本はまだまだCDが主流で。音楽×デジタルでいうと、iTunesのダウンロードストアが出てきたとか、ガラケーの時代なので着うた、着メロくらいしかなかったような時代でした。

そういう時代なので、インディペンデントアーティストが簡単に音楽を発表することができないような状況だったんですよ。」

野田と吉野が出会った2000年代当初、インディペンデントアーティストが自分の音楽を世に出すためにはレーベルと契約することが主流、資金面でもかなり苦労が多く、音楽一本で生活していけるような人はほんの一握りだけだったそうです。 

月日は流れ、野田と吉野は大学を卒業し、野田はアドウェイズでIT・Web業界でのキャリアを歩み始め、吉野はアーティストとして活動を継続していました。

「アーティスト活動を継続する中で、日本の音楽流通システムが海外に比べて遅れていて、もどかしい気持ちがありました。周りにはいい音楽、クリエイティブがあふれているのにそれが世に出ていくことがほとんどないし、ほとんどの人が夢をあきらめてやめていってすごくもったいないなと。そんな時、友人のラッパー OHGA (https://www.instagram.com/ohgamusic/)から、『海外では、TuneCoreっていうiTunesに簡単に配信できるサービスある』と聞いていて、たまたま飲みの席で野田に『海外にはこういうサービスがあるらしいけど、日本で作れないの?』って言ったのがすべての始まりでした。」 

当時海外は日本よりデジタル化が大幅に進んでおり、海外のアーティストは誰もがオンラインディストリビューションサービスを利用して自身の楽曲を簡単に配信できるようになっていました。

ちょうどその頃、野田は自分の会社を立ち上げており、音楽とITの架け橋となる事業を模索していていました。吉野をはじめとした大学時代の音楽仲間からインディペンデントアーティストを取り巻く環境や危機感を感じ取り、なんとアメリカ(NY)のTuneCoreに出向いて直接交渉。日本市場の大きさやデジタル化したときの可能性を伝えたことで、ジョイントベンチャーとして日本でサービスを開始できることになったのです。

「情報共有くらいの気持ちで話していた音楽×デジタルの話が急に現実味を帯びてびっくりしたのと同時に、このサービスなら後輩たちや他のアーティストの活動をサポートできるかもしれない、インディペンデントアーティストが抱える悩みを解決して、業界を変えられるかもしれないと可能性を感じました。ぜひ一緒にやらせてくれという感じで、一緒にサービスを作ることになりました。」

こうして自身のアーティスト活動継続よりも、今後の音楽業界の発展の可能性にワクワクした吉野は、野田と共にTuneCore Japanの立ち上げから参加したのでした。

ガラケー全盛時代に始まった挑戦―――すべてはアーティストのために

今でこそ当たり前になったストリーミングサービスですが、当時の日本では考えられなかった新しい概念だったこと、そして、ガラケー全盛の時代のせいもあり初めは配信先も見つからないという苦労の連続でした。

そんな中、日本ならではのプロダクトを実装しながらインディペンデントアーティストの未来のために地道にサービスを広げていったTuneCore Japan。日本音楽シーンがようやくデジタル化され始め、国内でストリーミングが開始した2016年頃には、曲の流通量でトップクラスまでになっていました。サービス開始から数年でここまで大きく広まった理由は、やはり“サービスの良さに尽きる”と吉野はいいます。

「TuneCore Japanは、本国のサービスをそのまま持ってきたのではなく、日本で一から開発したサービスです。プロダクトを設計するにあたっては、常にアーティストファーストな考え方を大切にして作ってきました。アーティストにとって必要なサービスをただ提供するんじゃなくて、『このサービスって俺たち(=アーティスト)のために作ってくれてるよね』って思ってもらえるようなものを意識して。

例えば一般的にはこういうルールになっているけど、今の状況を考えると本来こうあるべきじゃない?とか、今まで誰も手を出さなかったところであっても、今後の日本の音楽シーンに良い影響を与える可能性があるのであればどんどんアイデアを出したり、そのためのサービスを作っていきたいと思っています。」

TuneCore Japanが大きく成長できた2つのポイント

多くの壁を乗り越えて、アーティストのためのサービスを提供し続けるTuneCore Japanの成長のきっかけとなったポイントはどこにあるのでしょう。

吉野が感じる成長ポイントは大きく2つあるそうです。

 「1つは、ユーザー側の楽曲制作ハードルが下がって、誰でもアーティスト・クリエイターになれる時代になってきていることがサービス成長の要因かなと思います。

TuneCore Japanは日本の音楽シーン全体がデジタル化(ガラケーからスマホへシフト)する前の2012年から、日本のアーティストに必要だと思ったディストリビューションサービスの基盤を完成させて使いやすいサービスを提供してきました。

自分が大学生だった20数年前に比べたら、現代は誰もが比較的簡単に楽曲制作に取り組める世の中になっていますけど、そういう時代の波にしっかり乗れたというか。アーティストが楽曲制作したい、それをどこかで配信したいと思ったときに真っ先に頭に浮かぶサービスになっていて、多くの人に利用してもらえているじゃないかなと思いますね。」

もう1つのターニングポイントはコロナ禍で決断した、あるキャンペーンです。

「コロナになって、結構みんな家の中にいなきゃいけなくて、やることがない人が多かったと思うんですよ。通勤や通学に使っていた時間が浮いて、自分のことに使える時間が増えたりしたタイミングでもともとアーティストだった人に限らず、会社員も学生も、俳優さんなんかも、自分で楽曲を作って配信してみようかなっていう感覚を持った人が普段よりも圧倒的に多かった印象がありました。

世の中も先が見えないような暗い状況だったんで、こういうときにちょっとでも多く音楽が広がって世の中が面白くなるんだったらなっていう思いで、PR/マーケチームの発案で全サービスの3年間無料クーポン提供を行ったんですよ。」

音楽の力で少しでも世界を明るくできればというチームの決断により始まったコロナ支援策である「STAY TUNE, BE STRONG」では、他社に先駆けてアーティスト・ミュージシャン・クリエイターの活動支援・サポートとして、全サービスの無償提供を行いました。

このサービスを行った2021年は大勢のアーティストが逆境を跳ね除けるように自分の音楽に想いをのせて楽曲を配信、アーティストへの還元額は前年比137%という大きな伸長を見せています。

今まで挑戦できなかった音楽活動に踏み出してみた人にとってはもちろんうれしいサービスですが、もともと活動しているアーティストにとって、自分の楽曲を披露するライブハウスやクラブの出入りも禁止されて金銭的にも先行きの不透明さが際立っていた時に、無償で楽曲配信ができることによって音楽活動を継続できたアーティストや、音源配信からの収益によって状況が好転するなど救われたアーティストも数多くいたことでしょう。

デジタルが当たり前でない時代でも、世の中が未曾有の出来事で混乱している時代でも、常にアーティストファーストな考え方を根底に置きながら、自分たちのサービスを信じて時代をリードしてきたTuneCore Japan。

次回後編では、そんなサービスを支えるTuneCore Japanのメンバーの話や、吉野が描く未来、今後の展望についてお届けします。

お楽しみに。

 

Wano採用情報はこちら