COLUMN 2022.6.9

2021年度、利用アーティストへの還元額はついに98億円に。2012年のサービス開始から、今のTuneCore Japanに至るまでの軌跡。

先日、Wanoグループの音楽デジタルディストリビューションサービスTuneCore Japanが、2021年度のアーティストへの還元額が約98億円(前年比137%)となったことを発表しました。2012年のサービス開始後、大きな成長を遂げるTuneCore Japanですが、ここに至るまでの道はどんなものだったのでしょうか?TuneCore Japanのプロダクトリードの山本と、WanoでTuneCore JapanのPdM(プロダクトマネジャー)を務める佐多に、これまでの取り組みと2022年の展望について聞きました。

第一のターニングポイントは、2015年頃のストリーミングサービスの上陸

2015年にTuneCore Japanに入社して以来、ずっとサービスの成長に関わってきた山本。一つ目のターニングポイントは、2015年頃だと言います。

「2015年から2016年にかけて、Apple MusicやSpotifyなどのストリーミングサービスが日本に続々と上陸し、アーティスト側にもユーザー側にも“ストリーミングで音楽を聞く”という概念が浸透していきました。」

2015年は日本における音楽ストリーミング元年といわれ、実際にTuneCore Japanにおけるストリーミング売上は、2014年から2015年で2000%、2015年から2016年で約630%と急成長しています。これは日本全体における成長率を超えるものでしたが、それはTuneCore Japanが対象とするインディペンデントアーティスト(独立性が高いアーティスト)の存在が大きくなったことを示しています。

「インディペンデントアーティストはプロモーションや配信方法に至るまで自分達で決定ができるので、メジャーなレコード会社の楽曲に比べて、ストリーミングに移行するのが早かったんです。特に当時は新しいものを積極的に取り入れていくヒップホップ/ラップ周辺のアーティスト達の間でその動きが広がりました。」

ヒップホップアーティストKOHHも、2016年にTuneCore Japanをきっかけとして世界で注目されるようになったアーティストのひとり。

コロナ支援策として1週間で決定したサービス無償化「STAY TUNE, BE STRONG」

次のターニングポイントは、コロナ禍で音楽利用実態が大きく変化したことでした。コンサート、ライブ、カラオケ等が減った一方で、有料配信型ライブ及び定額制音楽配信サービスの利用は増え、それと同時にTuneCore Japanの利用アーティストも増えていきました。

ただし、これは今振り返ればの結果論で、2020年当時、状況は非常に逼迫していました。

「コロナにより、ライブハウスやクラブ、アーティストは苦しい状況に陥りました。先行きが不透明な中、僕の元にも不安を感じる声が届いてくるようになっていて、なにか自分達にできることはないのかと考えたんです。「国内のアーティストたちが継続的に活動できる社会の実現」というミッションのもと、全サービス無償化のアーティスト支援策を提案したところ、会社としては売上がへり審査やサポートに負荷がかかるといったリスクがあったにも関わらず、ロックダウンから1週間でチームの意思も固まり、みんなで協力して実現することができました。」

同時に、The Magazine(TuneCore Japanが運営するアーティスト向けマガジンメディア)に掲載していたインディペンデントアーティスト向けの記事を整理し直し、「インディペンデントアーティストが今できること」を発信。また、米国TuneCoreのグローバルキャンペーン「Independent AF」を日本でも展開し、コンセプトに合うアーティストをピックアップし、SNSや動画でプロモーションしたり、パーカーを作ってプレゼント。インディペンデントアーティストという言葉が浸透していくきっかけとなりました。

その他、インディペンデントアーティストに光を当てる場所としてのオーディションに継続して力を入れており、2022年には世界でも注目されるFUJI ROCK FESTIVAL‘22のオフィシャルパートナーとして、同フェスの「ROOKIE A GO-GO」ステージ出演オーディションをFUJI ROCK FESTIVALと共同で実施し、過去最高のエントリー数を得ています。

コロナ禍で自分達がいますぐ出来ることを考えた結果が、サービスの無償提供と必要な記事情報のキュレーションだったという山本。

楽曲配信だけでなく、それに関わる全ての活動をケアできるサービスを目指して

一方、サービス内の拡充も毎年着々と進んでいます。例えば、2019年には収益を関係者で分配できるようにするスプリット機能を、2020年には歌詞の配信機能やInstagramでの楽曲配信対応が開始されています。2021年には、中国大手の音楽配信サービスTencent GroupとNetEaseへ楽曲提供を開始し、アジアマーケットにおけるアーティストの収益アップを実現。特に中国の音楽マーケットにおいては、例えばツユや鎖那といったネット発のアーティストが楽曲再生数を伸ばしています。

2022年、開発チームがフォーカスしていくのはどういった活動になるのでしょうか?2021年よりPdMとしてチームへジョインした佐多は「単なる楽曲配信ツールではなく、活動のサイクル全てを補強するサービスを目指している」と言います。

「アーティストがそれぞれのゴールに向かって、独立して楽しく音楽活動を継続できる環境を形成することを目指すTuneCore Japanとして、サービス側でもそれを実現していくことを考えています。アーティストは音楽を登録して配信して終わりではないので、配信した後どうプロモーションし、どうファンとコミュニケーションを取っていくか。たくさんの配信ストアでの状況を迅速に把握し活動に生かすにはどうしたらいいか。そういった部分をサポートする機能を実装する、開発プロジェクトを進めています。」

「楽曲の配信だけでなくアーティストの活動を網羅的に支援するプロダクトへとさらに進化・成長するフェーズとなったことで、チームとしてもフロントエンドもサーバーサイドもメンバーを増やし、開発スピードを上げていきたいと思っています。採用活動も強化しているので、音楽や映像に携わったことがあり、アーティストやクリエイターの支援をしたいと思っているエンジニアがいたら、ぜひ連絡して欲しいです。」

アーティスト活動のサイクル全てを補強するサービスを目指す、エンジニアチーム。昨年は管理画面のリニューアルなども行っています。

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