COLUMN 2023.10.31

音楽業界の新たな流れを作るー遂にリリースした「VideoKicksビデオ配信サービス カラオケ配信」開発プロジェクトの裏側

9月12日、Video Kicksから、「Video Kicks カラオケ配信」がスタート。楽曲の音源と歌詞があれば、全国どこでもオリジナル音源でカラオケ配信が可能になるサービスです。今回のリリースは、インディペンデントなアーティストの活躍の場を広げるだけでなく、これまでミュージックビデオやライブ映像を動画ストアに配信してきたVideo Kicksとしても新たな試みでした。

今回は、この開発プロジェクトに中心メンバーとして関わった3人に、開発時の苦労や業界でも“画期的”というカラオケ配信の詳細について、そして今後のVideo Kicksとしての展望を聞いてみました。

宮應:Video Kicksのセールスリード。フロントマンとして、クライアント/ユーザーコミュニケーションを担当。

前田:Video Kicksのプロダクトマネジャー(PdM)。今回のプロジェクトでも、スタートからプロジェクトを牽引。

伏見:Video Kicksのエンジニアチームのリード。今回のプロジェクトでは、UI設計から実装までを担当。

2年前から開発がスタートしたカラオケ配信

2023年9月12日にリリースされたカラオケ配信。実は、かなり前からTuneCore Japan内で話としては出ていたそうですが、カラオケ特有の設定機能をWEBブラウザで提供するということに技術的なハードルがあり、断念していました。しかし、Video Kicksとして、TuneCore Japanがリリースしてきた100万曲をどのようにユーザーにリーチしていくか、ということを考えていく中で、“自分の曲をカラオケ配信したい”というアーティストからのリクエストなどもあり、この「カラオケ配信」を進めることになったそうです。

「カラオケ配信自体、大きめのディストリビューターもやってなくて、“カラオケ配信といえばここ!”というようなところがなかった状態でした。技術的なハードルとしては、歌詞を曲のタイミングにあわせて出すのを登録側が調整する部分のUI設計が難しいんです。でも、社内でも色々話をして、タイミング設定をブラウザで実装することにハードルはあるけれどなんとかできるんじゃないか?ってことで進めることになりました。結果、結構開発期間かかっちゃいましたけど(笑)。」 

それまでVideo Kicksが主に行っていたのは、楽曲など“預かったもの”を様々なストアの仕様に合わせて納品していくことでしたが、新たに開発が始まったカラオケ配信は、“ユーザーにコンテンツを作ってもらわなければいけない”という、これまでと全く異なるものでした。

ゼロからUI/UXを作り上げる大変さ

Video Kicksとしても“過去イチ”のサービスリリースとなった「カラオケ配信」は、新たな試みだったこともあり、最初の設計からも大きく変わるなど試行錯誤を経て今の設計になったため、開発には2年という長い期間を要したそうです。

「新しいことをやるということもあって、参考にできるようなものもあまりなかったんですよね。しかもそれを初めてブラウザでやらなければいけないという難しさもあって、もはや最初の設計は跡形もない(笑)。3~4回ガラッと仕様は変わっています。」 

“あなたの音楽でセカイを紡ぐ”のビジョンのもと、アーティストをサポートし、アーティストおよび音楽の素晴らしさを世界中に広めるサービスを運営する以上、最も試行錯誤したのはUI/UXの部分だそうです。

「難しかったのは、設計自体というよりUIの実装の部分でしたね。最初、動画編集ツールみたいなのもアイディアとしてはあったのですが、それだとアーティストが使いこなすのが難しいんじゃないかということで、今の歌詞をなぞって文字同期を作っていく仕様になりました。実はちょっと裏で“イイ感じ”にしておく、というのがミソなんです。全部ユーザーにお任せのスタイルでも良いんですけれど、ユーザーが気づかないうちに自動補完して“イイ感じ”にすることで登録しやすくすると言う塩梅にもすごく苦労しました。」

UI/UXについては、実際に触れてみないと使いやすいのか使いにくいのかが分からないため、まずはできたところをユーザー視点に近い宮應が試してみて、その後プロジェクトチーム以外のメンバーに試してもらい、フィードバックを受け、改善を重ねていったそうです。

「チェックがスマホとかでできない部分はこれまでと違った苦労でしたね。カラオケ実機でのチェックというのも初めてで、カラオケの機械に詳しくなりました(笑)。実際、リリース後もカラオケに行ったりしましたよ。でも、バグを見つけたらいやだから本当は触りたくないと思ったり(笑)。それは冗談として、アーティストの方が喜んでくれたら一番です。今のところ、使いやすいという声も多くて、これまでの苦労も報われました。」 

Video Kicksカラオケ配信登録画面

「原盤をカラオケで流せる」「自発的に登録できる」ことの新しさ

様々な試行錯誤を経て、遂に9月12日にリリースを迎えたカラオケ配信。リリースから約1か月で既に多くの楽曲の配信がスタートしています。多くの反響がありましたが、特に好評だったのは、「原盤」をカラオケで流せるということでした。

「これまでは容量の問題で原盤を流すということは難しくてできていなかったのが、技術が追いついて原盤が流せるようになったのが大きいですね。実は、カラオケで“生歌”と言いつつ実はオリジナル音源じゃなかったんですよ。なので、アーティストの方からは、自分の曲が原盤で配信できるのは“画期的!”という嬉しい反応がありました。ファンの人としても、きっとそのアーティストのオリジナル音源が聞けるのはすごく嬉しいだろうと思いますし。」

「小さめのレーベルやインディペンデント系のアーティストは、どうやったらカラオケに載せられるの?売れたら勝手に配信してくれるの?みたいな感じで、自分からアプローチする手段がほぼなかったんですが、このカラオケ配信で、楽曲をリリースしたと同時にカラオケに載せることができるようになるのはインパクトが大きいんじゃないかと思っています。

またカラオケ事業者にとっても、売れてから登録と言う今までの流れだとどうしても最新の曲の配信が一足遅くなっていた問題を解消できるのではないかと思います。音楽の流通の仕組み自体が変わってインディペンデントアーティストから話題の曲が生まれることも増えてきているので、それに対応したカラオケ配信の仕組みがあるのはいいことですよね。」

今後のVideo Kicksの展望

そんな大きな可能性を持っているカラオケ配信やVideo Kicksについて、今後の展望を3人に聞いてみました。

「カラオケで、ガイドボーカルもアーティスト本人の声というのはあまりなくて、ファンの人も嬉しいと思うので、カラオケ業界にムーブメントみたいなのを起こしていきたいというところはあります。

ただ、それ以上にそもそもアーティストの人たちに、まず自分の曲をカラオケ配信できるんだということを知ってもらいたいです。今は、どちらかというとカラオケ配信を“待っていた”人たちが使ってくれているのかなと思うのですが、もっとこのカラオケ配信のことを知ってもらって、カラオケ配信をどうやっていいのか全然分からないような人たちに使ってみて欲しい。そういう潜在ユーザーの方たちが多く使うようになったら、きっとUI/UXの部分の改善ももっと必要になると思いますが、色々分析をしたうえで、ユーザーからのフィードバックを反映していきたいと考えています。

Video Kicksはアーティストをはじめとするクリエイターが映像をどう活用できるか、をずっと考えてきたサービスです。まだまだVideo Kicksができることは色々あると思うので、このカラオケ配信をきっかけにサービスを拡げていきたいですね。」

あなたの音楽を全国のカラオケ店に配信しよう!