INTERVIEW 2022.9.12

新規事業立ち上げに絶対に必要なこと。ークリエイター支援領域でプロダクトを生み出し続けてきたWano役員が、経験から辿り着いた答えとは。

2008年の設立以来、クリエイター支援領域で0→1のプロダクトを生み出し続けてきたWano。2021年7月にスタートした新規プロジェクト、プレミアムキャンプめし『そらをあおぐ』を立ち上げた発起人であり、Wano経営陣の1人でEDOCODEの代表取締役でもある田村鷹正に、立ち上げに至った経緯について聞いてみました。

Webの世界で永遠に続くサービスなんてない

田村がWanoグループで再び新規事業に力を入れ始めたきっかけは、代表取締役を務めるグループ子会社のEDOCODEのポイントモール事業が、国内のシェアをほぼ網羅するほど大きく成長したことでした。もちろん今後も事業を伸ばしていくつもりはあるものの、新しい事業を始めなければと危機感を抱いたと言います。

「ITプロダクトを得意としているWanoグループとしては、新規事業をやり続けなくてはならないと改めて思ったんです。だってデバイスやテクノロジーの進化が激しいWebの世界で、永遠に続くサービスなんて考えづらいじゃないですか(笑)既存事業だけだといつか限界が来てしまうから、”新規事業にチャレンジし続けられる体制を作らないと”という想いはありました。」

まずはEDOCODEの中で何度も新規事業に取り組んだものの、最初の1、2年はなかなか上手くいかなかったと言います。そしてようやく芽が出そうな事業がPUSHCODE。既に3年前に作っていたものをメンバーの1人が”本格的に始動させよう”と乗り出し、現在田村はサポートに回っていると言います。

「メインではなくサポートに回っている理由は2つあります。1つは、プロダクト開発においていろいろな視点で課題やアイデアを見つけることがすごく大切です。僕が入ると僕の意見がどうしても強くなってしまうところがあるので、できるだけフラットにしたかったからです。そしてもう1つは、半分冗談ですが、資料もミーティング中も全部英語なので、僕が入ることによってみんながカタコトの日本語を使わなきゃいけなくなるから(笑)プロジェクトの進行が遅くなると嫌なので、遠慮してるんですよね。」

Wanoの経営陣の中で事業開発を手掛けているのは、野田・谷本・田村の3人。ポイントモール事業が安定化に向かい、PUSHCODE事業ではサポートに回っている田村は、3人の中で”自分が一番動ける状況にあると思った”と言います。

新たな事業として選んだのは、「食」の領域

Wanoが新たに手がける事業として田村が選んだのは、Wanoがこれまで得意としてきたIT領域ではなく、食の領域でした。ミシュランシェフの料理と顧客との接点を新たに生み出した事業、プレミアムキャンプめし『そらをあおぐ』を発足するに至ったきっかけを聞いてみました。

「友人に食の分野で活躍されている方がいて、”コロナ禍でみんなが外食を控えてスーパーに行くようになったことで、レストランに卸すような高級野菜が全然売れなくなってしまった”という話を聞いたんです。レストランが営業しなくなると、高級店向けにこだわった野菜を作っている農家が苦しくなる。その方たちが生活するには、普通の野菜を作るか農家を辞めるかしか選択肢がないのですが、一度農家を辞めると畑は簡単には元に戻らないのだそうです。この話を聞いて、”日本が世界に誇れる、多様でクオリティの高い食文化がなくなってしまう”と危機感を抱きました。」

コロナの影響で日本の食文化が失われてしまうのではと危惧した田村ですが、打撃を受けたのは農家だけではなくミシュランシェフも同じでした。農家やシェフの雇用を守るために、食の領域にもWanoが得意としているITプロダクトを取り入れることを思い付いたと言います。

「農家だけでなくミシュランシェフもレストランの営業停止によって仕事がなくなってしまう状況があったのですが、でもそれってレストランという場所に縛られてるから物理的に限界があると思ったんです。というのも、1つのレストランにお客さんが1億人来ることって不可能だと思うんですけど、Webの世界なら1つのサービスを1億人に届けられる可能性がある。”美味しいごはんを作ること”と”拡張性”をどうにか組み合わせられないか話している中、出てきたアイデアが『そらをあおぐ』でした。美味しい食材を作っている農家やシェフの雇用を守りながら、コロナのパンデミックが終わっても美味しいごはんが手軽に食べられる世の中をつくりたいなと。」

「レストランはユーザーリサーチに近いと思っていて、お客さんの反応を直接見られる環境なので定性データを得ることはできると思います。目の前で料理を食べてくれたお客さんが、美味しいという顔をしてくれたとか、逆に残されてしまった場合はあんまり美味しくなかったのかなとか。でも、それを元にメニュー開発されたものがもっと拡散されたらいいなと。僕らのいるIT業界で当たり前にある”拡散”という現象を、食の分野に活かしたビジネス展開って可能性があると思うので、それを今プロダクトに落とし込んでいるという状態です。」

新規事業を成功させるために絶対に必要なもの

2008年の創業以来、さまざまな新規プロダクトに取り組んできたWano。その中でも、2012年に開始した音楽ディストリビューションサービス『TuneCore Japan』が大きく成長していることについて、田村は ”絶対にこの課題を解決したいという熱意がそこにあったことが大きい”と言います。

「TuneCore Japanができる前の音楽業界では、良い音楽を作っている人の作品よりもコネクションがある人の作品の方が売れていたと思います。でもコネがあるとか偉い人に気に入られるとかいった、音楽以外のことが重要な世界は間違ってるんじゃないかと。もちろんコネクションがあることも才能や能力だったりするので否定はできませんが、間口を広げて良いものを作る人たちがちゃんと輝ける世界であるべきだという課題意識と、それを解決するサービスを絶対作りたいという強い想いがあったんだと思います。」

「何か新しい事業をやるには、誰か1人でもいいから、”絶対に変えてやるんだ”と本気で思えるくらいの熱意を持っていることが重要だと思います。人脈も知識も後からでも付いて来ますが、熱意がないと次々に立ちはだかる壁の前で下を向いてしまうと思うので。ただ、必ずしも言い出した人だけが偉いわけじゃないとも思っていて。そこに共感して集まって、これまでサポートしてきている人たちの力も必要不可欠です。それがチームでやるということだと思いますから。」

新規事業を生み出し続けるWanoにとって必要な人とは

最後に田村に、どんな人がこれからのWanoに必要だと思うか聞いてみました。

「他社がやってるから真似してやろう、というスタイルはWanoの中には基本的になくて、世の中に存在しない新しい価値を作っていくタイプの会社だと思っています。Wanoはクリエイター支援をVisionに掲げていますが、”支援”と言っている時点で、クリエイターが困っているという前提なんです。日本には何かを生み出している人たちにお金が適切に流れてないという状況がまだまだあると思うので、そういった課題を解決するところから始まるんじゃないかと。」

ITプロダクトを通してクリエイターの課題を解決し、世の中に新しい価値を生み出し続けるWano。新規事業の立ち上げにWanoが必要としているのは、やはり熱意のある人だと言います。

「新しい事業をやりたいと思っている人というよりは、何か一つでも熱意を持っていたり、めちゃくちゃ詳しい分野を持っている人にこそ、ぜひWanoに来て欲しいなと思っています。何か事業をやりたいという話を持ちかけるとき、もちろん計画は必要ですが、そもそもその業界に興味があるのか、どれくらいその領域に課題意識があるのかということの方が大事だと思うので。事業計画なんて失敗する可能性も全然ありますし、どうやったら上手くいくかなんて誰も答えを持っていないですから。ぜひ上手くいくまでやり続ける熱意がある人と一緒に働きたいですね。」